月別アーカイブ: 2015年10月

特別企画展〝彫刻家 武井直也の軌跡〟

10月17日から、特別企画展「彫刻家 武井直也の軌跡」を開催しています!!
岡谷市出身の武井直也(1893-1940)は、大正から昭和にかけて、フランスにわたり彫刻を学び、日本美術院展(院展)や文部省美術展覧会(文展)を中心に活躍した彫刻家です。
フランスの近代彫刻といえば、「考える人」を作ったロダンが有名ですが、武井が学んだのは、ロダンの弟子、ブールデルです。
帰国後もブロンズ彫刻や大理石彫刻といったさまざまな表現に挑戦したり、彫刻の基本に立ち返ることを目指して日本彫刻家協会を立ち上げるなど、生涯パワフルに活動しました!

活動拠点は主に東京に置きましたが、たびたび帰郷して、故郷の人たちを集めて彫刻講習会も開いていたのだそうです!

展示作品は、男性や女性の裸体彫刻や、頭だけの彫刻、地元の人をモデルにした胸像など、さまざまです。
とても写実的で、一つ一つ見ていると、「こういう人が実際にいたんだなあ」としみじみ思います。

ところで、以前にも当館で武井直也の作品展を何度か開催していますが、同じ彫刻を学校や公園などでも見た、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ブロンズ彫刻は、石膏で作った原型をもとにして鋳型を作り、溶けた銅を流し込んで作ります。そのため、一つの原型からいくつもブロンズ彫刻を作ることができるのです(といっても、何回も作っているとだんだん形が変わってしまうので、数個しか作れません)。
当館には、遺族の方から寄贈していただいた石膏原型がたくさんあるので、それをもとにブロンズ像が複数作られ、市内のいろいろな所に設置されました。
ブロンズ彫刻には、いろいろな色の塗料が塗られていて、渋みのあるいい色合いが出ています!造形の美しさとともに、そんな色の違いも楽しんでいただけると思います。

もうひとつ圧巻なのが、大理石彫刻です!!
自然の石の持つやわらかい白さや、ツヤがなんとも美しいです✦

武井直也 黎明

「黎明」 1938年 大理石 第2回文部省美術展覧会出品

ですが、この作品は約230kgと、ものすごく重いんです!!
その重さを感じさせず、上品でやわらかな質感を出すのは、武井直也のすごさですね!

ぜひこの機会に、武井の作品の迫力を、間近で感じていただけたらと思います!!

関連イベントとして、11月3日(火)13:30から、本展のゲスト・キュレーターとしてご協力いただいた日本近代彫刻の専門家である井上由理氏の作品解説が行われます。
またこの日は、当館のリニューアル開館2周年記念として、無料開館いたします!
ぜひおこしください!!

それからもう一つ、11月21日(土)10:00から、地域交流イベント「岡谷市役所前の野外彫刻クリーニングをしてみましょう」を行います!
これは、風雨にされされる野外彫刻の汚れを落とし、ワックスを塗って表面の塗装を保護する作業です。
作品が見違えるようにきれいになる様子を実感していただけますので、ぜひふるってご参加ください!!
また、今年の8月2日にも、岡谷湖畔公園の作品のクリーニングを行いました。
クリーニング後の作品は、ツヤを取り戻し、野外美術館のように美しい仕上がりとなっていますので、こちらもぜひご覧ください✦✦

星美加ワークショップ〝摩訶不思議な背景に絵を描こうー銀箔を使って〟

10月10日(土)、星美加さんのワークショップ“摩訶不思議な背景に絵を描こう―銀箔を使って―”を行いました!!
銀箔というと、なんだか豪華な感じがしますね☆
どんな絵ができるんでしょう?

まず、「ジェッソ」という絵の具で赤く塗られた画用紙に銀箔を貼ります。
銀箔は、とても薄くて、ちょっと風が吹いただけでも、めくれてシワになってしまいます。
「蝋引き紙」というつるつるの紙を銀箔の上にそうっと置いて、銀箔をくっつけます。

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赤く塗られた画用紙に、「グロスメディウム」というノリのような薬剤を塗って、銀箔のついた蝋引き紙を乗せ、銀箔を移します。

IMG_9212 - コピー

よく空気を抜いて、絵を描くための土台が完成しました!!

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本当は、この銀箔を貼る工程も、参加者の皆さんに体験していただけたらよかったのですが、時間の都合もあり、ここまでは、前日に星さんと職員が行いました。

いよいよワークショップ当日です!
前日準備した銀箔の画用紙に、グロスメディウムで絵を描きます。
グロスメディウムは透明なので、描いたときは絵がよく見えないのですが・・・・

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上から硫黄(ムトウハップ)を塗ると・・・あら不思議!!

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ムラが出ないよう、上から新聞紙を敷いて硫黄を塗ります

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メディウムで描いた絵だけが銀色に残って、他のところが茶色くなっていきます!!!
これは、化学反応で銀が硫化されて茶色くなる現象だそうです!
メディウムを塗ったところは、マスキングされて銀色が残るんですって!!
硫黄を厚く塗るほど、茶色も濃くなります。
色の出方も、ムラがあっていい感じです!きれいな青緑色に変化するところもあります✦

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自然現象ってすごいですね!

有名な尾形光琳の「紅白梅図屏風」の水の流れの部分も、この技法を使ったと考えられているそうです!
ちなみに、星さんがこの技法で描かれた作品がこちらです!!

Phrase

「Phrase」 2010年 パネル、銀箔、アクリル、油彩

最初は「難しそう・・・」と言っていた子たちも、いつの間にか絵の世界に没頭して描いていました!
ドライヤーで乾かしたら、アクリル絵の具を塗って仕上げます。

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銀色と茶色がうまく生かされた、ステキな作品ができあがりました!!
わかりやすく教えてくださった星さん、参加者のみなさん、ありがとうございました!!

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特別企画展〝新世代アーティスト展 星美加〟

10月10日から、「新世代アーティスト展 星美加」が始まりました!!
「新世代アーティスト展」は、国内外で活躍の幅を広げている新進気鋭の若手アーティスト3人を連続してご紹介する展示です。

この第2弾は、画家の星美加さんの作品を展示します。
星さんの作品には、どこか寂しげで懐かしい、映画のワンシーンのような雰囲気が漂っています。
なんとなくヨーロッパを思わせる風景は、星さんの記憶や夢の中、映画や本で見た風景などが混じった、現実には存在しない風景なのだそうです!
はじめて見る風景をどこかで見たことがあるように思うことはありませんか?
星さんも、見たことのなかったイタリアの風景を懐かしいと感じたことがあるそうです。
実際に、星さんは何回かイタリアに研修に行かれていて、そのとき出会った風景をもとに描かれた作品もあります。

これは大学院の修了制作で、お友達からもらったトスカーナ地方の田園風景の写真ハガキを見て感動し、実際に現地でスケッチして描かれた作品とのことです!

2005One scene from past小

「One scene from past」 2005年 パネル、油彩、アクリル、テンペラ

夢で見た風景や、現実にはないけれど懐かしい感じのする風景を絵にするなんて、すごくステキですね!!私も絵が得意だったらやってみたいです・・・

星さんは、こうした記憶の中の風景にリアリティを持たせるため、3DCGという方法を用いています。たとえば、カーテンが風になびく様子や、鏡に映る部屋の中、開きかけたドアから見える向こう側の風景などを、このソフトを使ってパソコン上で作り出し、それをもとに作品を制作されているそうです。
絵の中の世界が、まるで目の前に存在するかのように見えるのは、こうした緻密な工夫がされているからなんですね!!

2011残された部屋

「残された部屋」 2011年 パネル、油彩、アクリル

また、星さんの作品には、「死は身近にある」というメッセージや、諸行無常・侘びさびの感性も込められています。絵の中に登場するカラスや幽霊のような足は、死をあらわし、古びて朽ち果てたものや、一瞬で消える波紋や風などは、はかなさを表現しているそうです。
死といっても、「恐怖としての死」ではなく、誰にでも平等に訪れて繰り返されていく「穏やかな死」のイメージとのことです。

確かに、星さんの絵の中のカラスや頭蓋骨、横たわる人の横に脱ぎ捨てられたかのようなシャツなどを見ると、死を連想して一瞬ドキッとしますが、作品の雰囲気はどれも穏やかで、あっという間にその静かな世界に引き込まれます。
絵の中の人物はこの後どうなるんだろう?とか、このドアの向こうには何があるんだろう?など、いろいろな物語を想像できるのも、星さんの作品の醍醐味ですね!!

ところで、星さんの作品は、「アクリル」や「油彩」といったおなじみの絵の具のほかに、「テンペラグラッサ」という聞きなれないものも使われています。これは、卵黄と油、顔料を混ぜた絵の具で、長い年月が経っても劣化が少なく、鮮明な色を保てるのだとか!!
ルネサンス期のイタリアで活躍した巨匠、サンドロ・ボッティチェリもこの技法を用いていて、星さんはフィレンツェでの研修でこれを学んだそうです。
今回、星さんによる、ボッティチェリの作品「柘榴の聖母」の模写も展示させていただきました。とっても色鮮やかで美しい作品です!!

2014フィレンツェ研修中模写

サンドロ・ボッティチェリ「柘榴の聖母」部分模写 2014年 板、テンペラグラッサ